インタビュー

株式会社ペブルスクエアジャパン

CEO ChoongHyun Lee氏
総務 清川 惠未氏

株式会社ペブルスクエアジャパン CEO ChoongHyun Leeさんと、総務 清川 惠未さんに、話を伺いました。

人の手のひらに収まるオフラインAI ― Pebble Squareが目指す、プライバシーと安心のテクノロジー

Qまずは、御社の事業概要と日本市場への関心について教えてください。

当社は、韓国・パンギョに本社を構えるファブレス型AI半導体スタートアップです。2021年9月に設立され、現在は韓国・日本・中国に拠点を持ち、約40名の研究開発体制を構築しています。私は東京大学で修士・博士課程を修了後、IBM Researchで脳神経型AIの研究に従事していましたが、従来の半導体アーキテクチャでは人間の脳のような処理は実現できないという限界を感じ、自ら起業しました。
日本市場は、技術的な成熟度と品質へのこだわりが高く、また私自身が日本に長く住んでおり、文化的な理解もあるため、最初の海外展開先として非常に親和性が高いと考えています。家族も日本に住んでおり、生活基盤があることも大きな理由の一つです。

Q日本市場に参入する上で、どのような課題を感じていますか?

日本は技術的に非常に魅力的な市場であり、品質へのこだわりや社会的な信頼感の高さは、私たちの技術を展開する上で大きな魅力です。その一方で、銀行口座の開設や法人登記といったインフラ面の手続きには一定の時間やプロセスが必要ですが、制度がしっかりしているからこそ安心して長期的にビジネスを展開できる土台があるとも感じています。
また、日本企業との商談では信頼関係の構築に時間をかける文化がありますが、これは結果的に一度関係を築ければ長期的で安定したパートナーシップにつながる強みだと思います。PoCを通じて実績を積み上げるプロセスも、技術を実際に体感いただきながら一緒に価値を創造できる良い機会と捉えています。

Q御社の技術の強みと、それがどのような産業に貢献できるか教えてください。

当社の最大の強みは、Processing-In-Memory(PIM)アーキテクチャを採用したAI専用半導体チップです。従来のCPUとメモリが分離された構造では、データ移動に多くの電力と時間がかかりますが、PIM方式ではメモリ内で直接処理を行うため、超低消費電力かつ高効率なAI推論が可能になります。
この技術により、インターネット接続が不要な「オンデバイスAI」を実現でき、プライバシー保護やリアルタイム性が求められる分野に最適です。例えば、高齢者の見守り、火災検知、音声操作家電、IoT機器、ウェアラブル端末など、バッテリー駆動で動作する製品において、消費電力を大幅に削減しながら高度なAI処理を可能にします。

Qどのような日本企業との連携を希望されていますか?

私たちは、スピード感を持って動ける中堅企業や、柔軟な開発体制を持つハウスメーカー、家電メーカー、自治体、大学との連携を希望しています。大手企業は検証や承認に時間がかかるため、まずはPoCを通じて実績を積み、信頼関係を築いていくことが現実的だと考えています。
また、当社は単なるチップ供給にとどまらず、IPライセンシング、AIアルゴリズム開発、カスタムチップ設計、ソリューション開発まで対応可能です。日本企業の課題に合わせて、柔軟に技術提供・共同開発ができる体制を整えています。

Q実際に日本でのPoCや商談は進んでいますか?

はい。すでに日本の大手企業の子会社と代理店契約を締結し、複数のPoCも完了しています。音声認識や画像認識を活用した製品を、日本の住宅や高齢者施設向けに展開する準備が整いつつあります。PoCでは、弊社のチップを既存製品に組み込み、インターネット接続なしで音声操作や異常検知を実現するなど、実用性の高い成果が出ています。
代表的な製品「MINT」は、30 GOPSの処理性能で消費電力はわずか12mW。既存のMCUやIoTデバイスに組み込むことで、AI機能を追加しながらもバッテリー寿命を延ばすことが可能です。

Q製品の価格帯や導入コストについて教えてください。

PoCの段階では、200万円前後で3〜4ヶ月の開発期間を想定しています。量産可能なチップは非常に小型(5×5mm²〜20×20mm²)で、既存製品に組み込むことも可能です。また、当社のモデルは一括購入型で、月額課金が不要なため、自治体や公共機関にとっても導入しやすい設計になっています。
製品ラインは、音声向けの「MOCHA」、画像・音声処理対応の「MINT」、デュアルコアの「PAPAYA」、高性能領域向けの「ESPRESSO」などがあり、用途に応じて選択可能です。

Q都内企業へのメッセージをお願いします。

当社は、AIを「人の手のひらに収まる技術」として届けたいと考えています。社会的弱者の支援、防災、エネルギー効率の改善など、技術で社会課題を解決することが私たちの使命です。オンデバイスAIによって、プライバシーを守りながら、リアルタイムで人を助けることができる世界を目指しています。
日本企業の皆様には、ぜひPoCからでも構いませんので、当社の技術に触れていただき、共に新しい価値を創造するパートナーとしてご一緒できれば幸いです。

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